800種類を越える生きものを育む、浜名湖の豊かな自然環境

豊かな自然環境が、多様な生態系をつくる
520年ほど前に起こった明応の大地震と津波によって、外洋とつながった浜名湖。潮の満ち引きによって1日に4,000万トンもの海水が移動。干満差による水位変化は約1.2mと、ダイナミックな水の動きがあります。さらに都田川をはじめ、幾つもの川が流れ込み、山から運ばれるミネラルが魚介類のエサとなるプランクトンを育てます。水質に恵まれた浜名湖には、魚473種、貝139種、カニ101種、エビ57種、イカ・タコ類14種など、800種類を越える魚介類が生息。幻のカニともいわれるドウマンガニは浜名湖が漁獲北限、アサリは全国屈指の生息密度を誇り、5月を過ぎると潮干狩りを楽しむ人の姿を見ることができます。温暖な気候で、エサとなる魚介類も多い浜名湖は野鳥にとっても楽園。夏冬を問わず多くの鳥が飛来することで知られ、コアジサシといった希少な夏鳥の中継地や繁殖地にもなっています。湖岸に目を移すと、ハマヒルガオやコウボウムギといった海辺の植物も自生。魚介類だけでなく、多様な生態系が営まれる浜名湖は、静岡県立自然公園に指定されています。 また、ラムサール条約湿地潜在候補地にも選定されています。

海のゆりかごとよばれる、貴重なアマモ場
浜名湖の南半分は水深1〜2mほどと比較的浅く、半干潟上の砂地が広がります。水が澄み、明るいこの場所では、アマモ(甘藻)とよばれる長さ20cm〜100cmほどの海草が群生する「アマモ場」を広範囲に渡って確認でき、6月頃には綿毛のような白い花を咲かせます。自ら光合成を行うアマモは富栄養物質を取り除き、水を浄化する役割もあります。かつては日本の沿岸でよく見られ沿岸漁業の支えとなっていたアマモ場ですが、近年の埋立てや護岸工事、水質汚染などによって全国的に激減。浜名湖は約80万人が住む都心のそばにありながら、日本最大級のアマモ場が広がる貴重な場所でもあります。 細長い葉が立体的に生い茂り、水の流れも穏やかなアマモ場。大きな魚が侵入しにくいため、産卵や稚魚の成育にも適し、“海のゆりかご”とよばれます。葉上生物のワレカラ、葉の間を泳ぐタツノオトシゴ、ヨウジウオ、湖底にはハゼの仲間、カザミやスジエビ、ヤドカリ、ウニなど、多くの生きものが集まっています。さらにそれを求める魚が集まり食物連鎖のサイクルを作り出します。晩秋から冬になるとアマモは枯れ、アマモ場も縮小。ちょうどその頃、浜名湖では海苔や牡蠣の養殖が始まります。海苔は生長に欠かせない水中の窒素やリンを、牡蠣は有機物やプランクトンを吸収し大きくなります。結果的に浜名湖の水質が浄化され海苔や牡蠣の収穫が終わる頃、澄んだ水の中では再びアマモが生長し、多様な生きものの営みが循環します。江戸時代に始まり、日本最古ともいわれる浜名湖の海苔の養殖、明治20年ごろに始まった牡蠣の養殖など、昔から変わらない漁師の営みがアマモの生長を促し、相乗効果で豊かな浜名湖を守り続けてきました。

浜名湖の価値を未来につなぐ教育
浜名湖は学習の場としても利用されています。東海大学海洋学部は魚類やベントス(底生生物)の調査研究を行い、浜名湖湖畔にある小学校では浜名湖をテーマにした環境教育が行われています。例えば浜松市立庄内小学校(庄内学園)では6年生を対象に、持続可能な開発のための教育(ESD)プログラムとして、漁師や農家そして観光業者といった専門家と一緒に、浜名湖の文化や歴史、さらに自然環境や生きものについて1年かけて学習。何もないと思っていた浜名湖が、全国でも有数の豊かな世界が広がっていることを体験します。身近すぎて見過ごしていた浜名湖の魅力や価値に気付き、次世代につないでいく取り組みが既に始まっています。

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